マクガフィンとは、例えば、ロード・オブ・ザ・リングという物語の全体を貫いているリング、インディ・ジョーンズにおける聖櫃(アーク)がマクガフィンなのだ。
これらは物語を動かすためのアイテムであり推進力でもあるが、大事なことは、ヒッチコックがいうように、マクガフィンとは、物語の単なる入れ物であって、本質ではないということだ。だからそれが、ウラニウムの入ったワインのボトルが、ダイヤモンドの入ったそれにすり替わったところで一向にかまわないというこなのである。秘密のディスク、歩哨から奪った砦の地図、現場に残された黒革の手帳であっても同じこと。
この場合大事なことは、例えば、映画・逃亡者のプロローグで主人公キンブルがなぜ追われているのかは本人にも分からないし、読者(観客)にも分からない、同時に追っている側の正体も分からなければ、追っている理由さえもが判然としないという構図になっているということである。そこで読者(観客)はそれらをひとつずつ知りたいと思うようになって遂にはその物語に導かれていって最後まで読んで(観て)しまうハメになるのである。
これらの関係性は、それについては最初、主人公もまったく知らないらしい。同時に追っ手の連中も知らないままそれを取り返そうとしているらしい。それについて本当のことを知っているのは恐らく追っ手の背後にいる黒幕らしいという推測を働らかせてくれる。当然ながら読者(観客)には最初から知らされないという図式である。
マクガフィンとは話のつかみであり、目に見えない推進力になりうるものであり、かつ煩わしい状況説明などをはしょるのに都合のいいアイテムなのでる。またこれがないと読者はすぐに飽きてしまうものであり、最後まで読んで(観て)くれない。
出版したい本を読んでもらうためには、なにがしかのマクガフィン(サービス精神)がないと実に退屈なものになってしまうものなのだ。
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